改善事例
水分摂取・多職種連携による認知症の改善と 積極的なオムツ外し
●利用の経緯
令和2年3月に孫が東京の大学へ進学して離れて暮らすようなった頃から、うつ症状が出始める。
コロナの外出自粛で生活不活発病が進行し、転倒を繰り返す。両膝痛にも悩まされる。
「深夜に雨戸を開け、大声で亡くなった夫の名前を叫ぶ」、「裸足で外出し自宅へ戻れず、商店街で座り込んでいた」などの事件あり。
令和2年10月24日にご長男がリハプライドのことをSNSで調べ、直接来所。
認知症の度合いから非常に緊急性が高いと判断。その場で認知症ケアに強いケアマネジャーと福祉用具さんへ電話。3名で夕方に自宅訪問。即介護保険の申請手続きと福祉用具の貸与準備に入った。
申請認定を待たず、翌々日の令和2年10月26日からリハプライドを利用開始。
●通所回数
通所開始時リハプライド週3回利用
⇒現在は週5回利用
●個別機能訓練
・踏み台昇降等 間欠性跛行がめだっていたので転倒しない様に下肢を挙上出来る様に
意識付けを行う。
●この改善事例のポイント(4つのケアの実践)
- 水分 1日500ml→平均3000ml超えにより、認知症の症状がほぼ消失。
- 食事 宅食の利用や栄養士の指導により、摂取カロリーが増え、
バランスも改善。 - 排便 おむつを外し、尿取りパッドのみの使用に変えたが、失禁なし。
便秘が改善し、1週間に1度の排便が、2日に1度へ変化。
下剤を中止できた。 - 運動 外出をせず、ほとんど歩いていない状態だった方が、
毎日外出をし、平均して1日1500m以上歩くようになった。
●課題およびケアプラン
朝起きてから、リハプライドから帰るまでの時間で、水分を2500ml摂取する。
・摂取カロリーの増加⇒栄養改善のため、菓子パンをやめて宅配弁当を導入。
食事の写真をスマホで撮影し栄養士の指導を受ける。
・活動量の増加⇒週末以外、全てリハプライドへ通所。通所時は、500mの歩行訓練を実施。
週末は、3000歩(歩幅70?、時速4?、30分)買い物などで歩く。
・生活リズムの改善⇒6時起床・7時朝食・12時昼食・15時間食・19時夕食。
リハプライドへ週5回通所して運動を行うことで生活リズムを作り、
昼夜逆転生活を改善する。
・屋内歩行移動⇒手すりを利用することで、転倒を防止する。
・屋外歩行移動⇒杖や歩行器を利用することで、転倒を防止する。
パワーリハビリテーション・個別機能訓練により、すり足歩行を改善する。
・トイレでの排便・便秘の解消⇒4つのケアの実践。おむつを外し、パッドへ切り替える。
トイレの定時誘導。座位姿勢の確認。下剤を中止する。
・トイレでの排尿⇒トイレの定時誘導。座位姿勢の確認
・起居動作の改善・義歯の適合⇒特殊寝台を利用する。歯科医との連携し、義歯を調整する。
・認知症状の消失⇒4つのケアを症状が取れるまで継続する。
●多職種連携によるケア
・月一回、病院にて事例検討会を行い、この方のケアについて医師や
薬剤師、栄養士など様々な専門職の方からアドバイスやご協力をいただきました。
●積極的なおむつ外し
利用初日からおむつを外し、パットに切り替えることにも初めて挑戦いたしました。
ご家族の納得を得るため、おむつからパットに切り替えることによる費用負担軽減というメリットや、衛生管理について、事業所での着替えの準備協力についてなどをしっかりとご説明し、ご理解いただけるように努めました。
また、使っていたおむつと同じメーカーのパットを使うことで、ご本人の肌触りなどの違和感を軽減することにも努めました。これは、多職種連携で病院の看護師さんからアドバイスをいただいたことが役に立ちました。
最初の一ヶ月は失敗もありましたが、だんだんと失敗も減り、パットも徐々に薄いものへと切り替えていくことができました。
●水分ケア
当初1日500mlだったのが、通所日は3000ml、リハプライドに通所していない日でも2200ml飲めるようになりました。
多職種連携でお世話になっている管理栄養士さんのアドバイスで、100ml程度しか入らない湯飲み茶碗から、食欲増進効果のある暖色系の大きめのマグカップ(300ml)へ変更。通所中は積極的に飲水されるご利用者様の近くに座席配置し、「行動感染」を起こし飲水を勧めました。
●歩行ケア
歩行量 通所前:外出ほぼなし → 現在:週平均1500m/日、毎日外出
以前はほぼ外出していなかったのが、平日は毎日リハプライドに通って機能訓練を行うほか、休日も散歩や買い物に行って積極的に歩くようになりました。
●認知症状の変化
?『お父さん朝ごはん出来ているわよ!! 』と言う
⇒消失した
?『私の食事はいつ出てくるの!? 』と言う
⇒ほぼ消失した
(週に1?2回程度症状が出ることがあるが、症状はごく軽い)
●考察・まとめ
・身体不調型(脱水タイプ)の認知症の症状がみられていたため、水分ケアに特に力を入れたところ、驚くほど大きな効果を実感することができた。
・初回利用時と表情が別人になった。最初は顔がこわばり、ひきつっていたが、今はとても笑顔が素敵で、穏やかになった。
・通所開始時は暴言を吐く,無表情,無関心といった状態であったが、現在は笑顔でスタッフや他の利用者様と会話ができるようになった。
・検温や自宅の鍵の施錠なども自分でできるようになった。
・重度の認知症の方だったが、多職種連携で様々な専門職の方からアドバイスをいただきながらケアを行うことで、症状を改善させることができた。今回の案件をきっかけに、専門職の方との交流も続いている。
・利用初日からのおむつ外しは大きなチャレンジだったが、今までに勉強会などで学んだ特別養護老人ホームの事例などを参考に挑戦して、うまくケアすることができた。デイサービスでも積極的におむつ外しができる、ということを証明でき、チャレンジして良かった。
・どんなに忙しくても、自立支援介護の使命を忘れずにリハビリに取り組んでいきたい。
改善事例をSNS等を通じて、積極的に発信していきたい。
(リハプライド 鷲宮)